四海公園の蓮
わかば深圳教室のある深圳市蛇口地区は、歩いているだけで様々な植物が目を楽しませてくれます。教室から20分ほどのところにある四海公園は今、蓮が見頃です。赤・白・紫の大輪の蓮がざっと見ても1,000本近く咲いているように見えます。
蓮といえば、牡丹、桃、水仙などと共に中国で愛される十大名花の一つです。
また「一蓮托生」という言葉でも知られるように、仏教とは切っても切れない関係にあります。
ドロドロの泥の中からはい上がって、水面から顔を出した時に美しいグラデーションの花びらを大きく広げる姿を、泥の中の現世から極楽浄土の開花へと向かう人間の一生に重ね合わせているのだそうです。
西洋人が蓮を見ても神聖さを感じない かもしれませんが、私にはただの美しい花には見えません。幼い頃から繰り返し知らず知らずに見てきた、お寺の仏様の座る「蓮台」のイメージが頭に焼きついているのでしょうか。
さて、蓮の他にも、深圳で最近見かけた花の中で気になった花が2つあります。それは、アジサイとブーゲンビリアです。
アジサイ
その花の色で言えば、アジサイは紫、ブーゲンビリアは赤というイメージでしょうか。しかし実際には、アジサイ、ブーゲンビリアともに今回載せている写真で言えば、花びらの色は「白」ということになります。
アジサイの鮮やかな部分は「花びら」ではなく「がく」です。本当の花びらは鮮やかながくの中央にある小さな白い部分です。写真でも開花しているものと、開花していないものがあるのがわかると思います。
ブーゲンビリアも赤い部分は花びらではなく、こちらは「苞」という葉のような部分になります。本当の花は中央の白い部分です。写真では2本開花していて、1本は開花していません。
ブーゲンビリア
じっくり観察してみると、ちょっとした発見が散らばっています。深圳では様々な花が街中で見ることができるので、植物園に住んでいるようなものです。せっかくなので時間のある時に観察してみてはどうでしょうか。
翻って中学受験の理科のテキストを見てみると、植物の単元では花びら、雄しべ、がく、胚珠の数、離弁花なのか合弁花なのか、双子葉類なのか単子葉類なのかという一覧が「全部覚えろ!」言わんばかりに載っています。
しかし、ここで重要なのはその数を丸暗記することではありません。重要なことは、どの花をとってみてもそれぞれに特徴があるということを知った上で、どんな花でも実際に花を見てみることです。興味を持ってみることです。
興味を持つということは、前提として多少の知識が必要です。ブーゲンビリアは一見、雄しべしか無いように見えます。その時には「雌しべがない花なんてあるのか?」と考えるには知識が必要です。そのための材料がテキストにはところ狭しと掲載されているのです。
様々な物事に「興味を持つ」、「疑問を持つ」ということは、社会に出てから活躍する上で非常に重要な力です。
近年注目されているAIU(国際教養大学)では、単純に英語を伸ばすだけでは世界で通用する人材とは言えないと考え、幅広い教養を持てるよう、国際大学としては珍しく実験を重視した自然科学教育にも力を入れたリベラルアーツ教育を実践しています。
その成果が出たのか、AIUは高い社会的評価を得て、京大、一橋に次いで就職に強い大学として週刊誌で紹介されたこともあります。
私たちは目の前のテストのため、受験のために勉強してしまいがちですが、本来、中学受験、高校受験は受験のためにあるのではなく、子供達の成長を促し将来の力とするためにあります。
その中でも理科と社会は教養を深めるために最も重要な教科とも言えます。「必ず植物に興味を持ちなさい!」とは言えません。子供が何に興味を持つのかはわかりませんが、興味を持つきっかけを作ってあげることはできます。
理科好き、社会好きになるきっかけは、たった一つの興味から始まることもあります。この子は理科が嫌い、社会が嫌いと決めつけずにテキストから離れたところでも、普段からきっかけを与え続けてほしいと思います。