香港学習塾 epis Education Centre

わかば深圳教室 教室長ブログ

教室長末木千尋

2011年12月に香港へ赴任。旧九龍教室、わかば深圳教室とで合計6年間勤務をし、2017年から再び深圳へ。きめ細やかなサポートには定評があり、時間が経つのも忘れついつい話し込んでしまうことも。本気で立ち向かう生徒の守護神として頼れるアネゴ的存在であるスエキチ先生は、衣食住どれをとっても刺激の絶えないここ深圳での生活がお気に入り。暑さには弱いが辛さには強い。好物は山椒のたっぷり入った激辛料理全般だとか。

ドローンスクールワークショップ

コワーキングスペースのイベント会場

深圳市龍崗区にあるドローンスクールにて、小・中学生向けのドローンのワークショップを開催しました。
ワークショップの構成は「飛行機・ドローンの歴史」、「ドローンの組み立て」、「DJIドローンのVRゴーグル体験」となりました。


ワークショップはほとんどが中国語で、一部英語という内容なので、中国語が得意な生徒に通訳として参加してもらいましたが、「問題は自力で解決する」というのが今回のイベントの主旨の1つでもあったので、困ったら中国語か英語でスタッフに自分で話しかけたり、身振り手振りで意思疎通したりしてもらいました。

ドローンの組み立ては、極めて中国的なノリで「とりあえず組み立ててみよう!」とスタートしました。木製のパーツを1つ1つ組み立てる作業は中学生でも大変な作業で、約1時間半を要する作業となりました。

ドローン本体の枠組みができあがったところで、ドローンを制御するボードやモーター、プロペラを取り付けます。


取り付けが完了した生徒からリモコンとペアリングして飛ばし始めるのですが、実はここからが中国式ドローンワークショップの開幕だったということは私もその時にはじめて理解しました。

いざ飛ばし始めてみると、さまざまな問題が起こります。今回組み立てたドローンは、ドローンの代表格である、クワッドコプター(quadcopter)でプロペラを4枚搭載したものです。
クワッドコプターの場合、全てのモーターの回転方向が同じ回転方向にしても飛ぶことができず、斜めのペア同士で回転をそろえ、隣同士は反対方向に回転させる必要があります。

また、モーターに取り付けるプロペラも2種類あって、それらを正しく取り付けないと、モーターは回転するものの全く飛ばなかったり、ドローン本体が回転しながら飛んでしまったりします。

これらの問題は座学で前もって知識を与え、説明書をしっかり見ながら組み立てさせれば何も問題が起こらないわけですが、そこは意図してか、意図せずにか「組み立てたら飛ばしてみよう!」、「飛ばなかったら考えよう!」というスタンスなので、問題がそこら中で起こります。

そして「なんで飛ばないの!?」ということになり、ここから学びの時間スタートという荒行です。

荒っぽい学びではありますが、座学で得る知識とは全くことなるインパクトがあります。説明書通りに正しく組み立てた場合は、モーターの方向など何も気づかずに飛ばせてしまい、全く学びがない可能性もあります。


学びのプログラムを精緻に作り込むことももちろん重要ですが、お膳立てが多いことで学びの機会を失ったり、学びのモチベーションを下げてしまったりする可能性もあります。

今回は中国の荒波のようなワークショップの中で自分の手で最初から最後までドローンを組み立て、飛ばすところまでの経験は、ドローンのワークショップを超えて中国そのものを経験しているという点でもおもしろい学びの機会になりました。

今回組み立てドローンは、手で組み立てたドローンにも関わらず非常に安定していましたし、プログラミングもできるものです。次はまたプログラミングもからめたワークショップにも挑戦したいと思います。


micro:bitでプログラミング×STEM vol.7 クリスマスライト

6年生の作品


5年生の作品

今回の「micro:bitでプログラミング×STEM」の授業では、micro:bitでクリスマスライトを作りました。
今回はmicro:bitにNeoPixelリング(フルカラーLED)を鰐口クリップで接続してNeoPixelをコントロールします。また、そのNeoPixelを入れるシェードの部分は生徒たちの自由な発想で紙やテープを使って製作します。

設計図のある作業ではないので、「これでいいの?」、「こんな風にしてもいい?」という質問が多いのですが、「自由に作っていいよ」、「完成形は決まってないよ」ということを毎回毎回伝えながらの作業になります。

日本人にとっては、やるべきことをやること、決められたルールを守ることは得意分野ですが、何をしてもいい、自由にやってもいいという状況は逆に窮屈な状況に陥ってしまいがちです。


暗い部屋でテスト中。

自由にやらせればやらせるほど、すばらしいアイディアも出てきますし、逆に問題にもぶつかることもあるのですが、その問題をいかに解決するのかも重要な教育的な課題となります。

その問題を解決する手段は、自分で考えることでもいいですし、友達と協力することでもよいのですが、どうしても先生に解決してもらうのを待つような子供もいるので、STEM教育で楽しみながら、さまざまな力を養っていってほしいと思います。

作品は想像もしていなかったすばらしい、楽しいアイディアばかりとなりました。

次回も楽しみです。




深センにおけるSTEM教育の実践 Nanshan School Maker Faire(南山学校創客節)

6歳の子供のプロジェクト

2018年11月17日、深セン市南山区の海上世界文化芸術中心にてNanshan School Maker Faire(南山学校創客節)が開催されました。School Maker Faireというのは、その名の通り学校のMaker Faire(DIYのお祭り)で、生徒たちがSTEM、アート、Make(メイク、創客)などの授業やクラブで作った作品を展示するイベントです。Maker Faire同様、作品を展示するだけではなく、各ブースに製作者や今回の場合は担当教師がいて、製作にまつわる話を聞くことができます。


洪水に備えた土地の活用に関するプロジェクト

今回参加していた学校の多くはPBL(Project Based Learning、項目式学習)を採用しており、担当の先生によると、「STEM」や「Make」という教科が重要なのではなく、PBLでSTEMを学ぶことが大きな意味があると話してくれました。

STEM教育というと、何を思い浮かべるでしょうか。ロボットをプログラミングしたり、Scrachでゲームやアニメーションをプログラミングしたりすることを思い浮かべるのではないでしょうか。

「STEM教育」というバズワードが一人歩きして、STEMのそれぞれの頭文字に当てはまれば、STEM教育と自称して売り出す商品やサービスがあふれかえっているので、「STEM教育」=「プログラミング、ロボティクス」という印象が強くなってきています。

STEM教育とは何かを定義したり、議論したりするつもりはありませんし、その呼称よりの中身が重要なことはいうまでもありませんが、今回の参加校の取り組みを見るとSTEMのイメージが大きく変わる人もいるかと思います。


5歳の生徒のプロジェクト

右の写真は5歳の子供達の作品です。これは石器時代の道具を自然にある物だけで作ろうというプロジェクトで、写真中央下に写っているのは、「たまごの殻の器と植物の茎を利用したストロー」、右下は「貝殻のお皿と植物の茎で作ったスプーン」です。自然にある物だけを使って、自らの手で物を作りあげることで、改良点が多々あることに気づくことができます。それを改良してよりよい物にしていく過程にこそ学びがあります。課題を決定すること、問題を解決すること、チームと協力することなど、ものづくり(Make)をする中での学びは多くの要素を含んでいます。

このように一切コンピュータやロボットに触れることのない学びの中で、社会、理科、技術(工作)、美術などが融合され、教科横断的に学ぶ手法でSTEM、Makeの授業が行われています。

STEM、Makeは、その過程にこそ意義があり、プログラミングはあくまでも手段です。プログラミングを単純に学ばせる必要があるのであれば、それは「プログラミング」の授業や「コンピュータ・サイエンス」の授業を別に設定する必要があります。


micro:bitを使った作品

左の写真の作品を展示していた学校の先生にお話を伺いました。先生はテクノロジー関連の担当の先生ということで、生徒達は週のSTEMなどの授業回数をたずねてみると、その学校の場合は授業は全くないとのことでした。

それではいつ学んで、いつ作品を作ったのかというと、昼休みと放課後の時間を使っての作業とのことでした。授業やクラブということではなく、生徒が何かを作りたいと思ったら、空いている時間に学校の作業スペース(Maker Space)に行き、先生と相談しながらプロジェクトを進めているとのことです。

自らの意思で、学ぶことを決め、時間を設定しています。これは学びというよりも、子供たちの意識としては「学び=遊び」に出来ている点で に理想的な形と言えます。

いくつかの学校が同様の方式で生徒の自主性に任せながら学びの環境を提供していました。中国の教育というと画一的、全体主義的なイメージがあるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れません。


会場で行われたワークショップ

「一度決めたことはやり通す」という初志貫徹型の日本に対し、「間違いに気づいたらすぐに改善する」という朝過夕改型の中国は、経済の発展だけではなく、教育の分野でも発展し始めています。

同じ東アジアの中国と日本は教育における親和性は欧米より高い部分もあると思います。STEM教育、プログラミング教育で先行している中国から成功例、失敗例を学び日本のプログラミング必修化に活かせるのではないかと思います。


深セン発!M5STACKワークショップ

ルーク先生のM5STACKワークショップ

M5STACKスタッフの多大なる協力の下、深センに住む日本人の小学生・中学生向けにM5STACKのワークショップを開催することができました。深セン発のデバイスであり、深センのエコシステムの象徴と言っても過言ではないM5STACKをここ深センで深センに住む子供達と学ぶ機会を得られたことは、本当にありがたいことです。

参加生徒13名に対して、なんと開発者のJimmyさんを含めたM5のスタッフが6人も来ていただけるという、超手厚いサポートでのワークショップとなりました。

講師はM5STACKの開発スタッフであり、STEMの先生でもあるイギリス出身のルークさん、そして日本語でのフォローに塩入さんも来てくれました 。

このワークショップで感じたのは、プログラミングがPCの中で完結することと、プログラミングでPC外部のデバイスを制御することは、全く違う体験なのではないかということです。


Scratchでネコのキャラクターを動かすのと、M5STACKのディスプレイにアニメーションを表示させる作業自体に大きな違いはありませんが、PCだけで完結するプログラミングに対して、PC外部のデバイスを制御できることは、物理的な空間への拡張性が全くちがいます。今後大きく発展するであろうIoTを体験し、学ぶという点でM5STACKはおもしろい製品だと感じました。

自分自身が技術的に何ができるのかを知ることは非常に重要で、脳波を感じ取るセンサーがあることを知らない人は、それを使った製品を作り出すことができるはずがありません。新しいサービスやプロダクトを生み出すためには、様々なテクノロジーに触れて想像力の幅を広げておく必要があります。

M5STACKは各種センサーを簡単に接続することができるので、「人を感知したらLEDをつける」という日常的に使われている機能から、子供が家に帰ってきて「ただいまー」と言った音声を拾って 親のスマートフォンに音声を届けるといったことも簡単にできます。


blocklyベースのUI Flowでプログラミング

M5STACKのようなデバイスや外部に接続するセンサーを安価に入手することができるようになり、小学生や中学生でも自分の思いついたアイディアを形にできるようになったことで、次の新しいサービスやプロダクトを生み出すステージにいつでも立つことができます。

また、今回のワークショップのように、プログラミング学習を目的とせず、手段として学びつつ、新しいサービス、プロダクトを生み出す想像力を養う手法は、日本のプログラミング教育での1つの方向性になるのではないかと思います。

「プログラミング」に重心をおくのか、「プログラミング×ハードウェア」でIoTを学ぶのか、同様に「プログラミング×ハードウェア」でプログラミングとハードウェアを手段として想像力を養うのか、一概にプログラミング教育と行っても方向性も手法も全くことなってきます。


M5STACKと各種センサー

日本のプログラミング教育は迷走しているようにも見えますが、子供達の何を育てたいのかさえ明確にできれば、後は予算と相談しながら教材やカリムキュラをそれに合わせて選ぶだけです。

ワークショップの時間中「楽しい!」を連呼していた小学生、先生が提示してくれたコードを無視して自分の思いついたコードに勝手に変えていく中学生(試したくてしょうがない)を見ていると、たった1回のワークショップでも子供たちにとっては刺激的な体験になったのではないかと思います。

また次も楽しいワークショップを開催できたらと思います。M5STACKのみなさまありがとうございました!


今年も行きました!Maker faire Shenzhen 2018

会場の海上世界文化芸術中心


車作りでSTEAM体験

2018年10月12日〜14日に深センの海上世界文化芸術中心でMakerfaire深センが開催されました。もともとDIY、ものづくり愛好家の交流、発表の場であるMakerfaireですが、科学技術の普及、教育の観点からも非常に面白い発見のある3日間でした。

今年は小学生は手作りの車作りのSTEAMワークショップに参加、中学生は日本人出展者のブースのボランティアに参加ということで、見学だけではなく、自分の手を動かしたり、出展者側に入ってイベントを体験するなど昨年とはまた違った楽しみ方ができたかと思います。そしてハードウェア、STEM教育で突っ走る深センの熱を体感することもできたかと思います。


ただの車ではなくデザインも重要なSTEAM

私自身もブースのお手伝いをさせていただき、まず一番印象に残ったのは、中国の親たちの科学技術に対する関心の高さと熱心さです。私のお手伝いしたブースでは光る帽子(LEDが入っているピンポン球がたくさんついた帽子)が展示されており、それが様々なタイミングで光ることで、かぶっているだけで楽しい気持ちになれる作品なのですが、これを見た一般の親たちのしてくる質問が、「これはどんな原理で光っているのか?」という質問は一般的だとして、「これは脳波を感知して光るのか?」という先進的な技術を取り入れられることを理解している親もいることに驚きました。

また、親子連れの場合で、子供が親に引き回されるようにして様々なブースを回っていて、親の方が必死になって何か楽しい物、学びのある物がないかを血眼になって探し回っているようで、チャンスを逃すまいとする気迫すら感じました。


中学生のボランティア

それから、日本人と中国人の興味を示すポイントの違いもおもしろく、前述の光る帽子もそうですが、「ただ楽しい作品」「ジョークの効いた作品」に対して、中国人は「これはいったい何のために使うのか?」と実用性に関する解説を求めてくる傾向がありました。

日本人がモノづくりを純粋にホビーとして楽しむのに対して、中国人はその先にビジネスを見据えていて、自分が好きな物を作る日本人と、ビジネスになりそうな物を作る中国人という構図もこのMakerfaireを通じて見えてくるようでした。
この日本人と中国人の観点の違いは、今の世界経済における日本と中国の状況そのものであるように感じます。


ARDUINOを使った出展品

自分の作りたい物を作る、モノづくりそのものを楽しむということが、今の世界経済下では優位に立てる材料になっていないようですが、今後AIが発達して、人間がより楽しんで生きることが重要になってくるときに、日本人の「遊び心」は重要になってくるように思います。

日本人は自虐的になるのが好きな民族なようですが、自分たちの良さも見失わないように、日本人が目指すべき理想に向かって発展していけたらと思います。

今年もあっという間の3日間最高でした!