ライチに学ぶ
新学期を迎え、慌ただしく過ごしているとうちに、ふと気づくと5月になっていました。目の前の業務に追われていると、どうしても先のことを考えることができなくなります。そんな時は忙しくても散歩やジョギングが有効だと思っています。散歩やジョギングの間、スマホやテレビなどから解放され、自分自身だけと向き合うと考えがまとまったり、新しいアイディアが生まれたりします。
深圳の街では様々な草花を目にすることができます。5月になるとライチの花が咲き始めます。5月、6月を通じて成長するライチを見ていると、深圳に住んでいる実感とここで流れる時間を肌で感じることができるような気がします。
ライチのことを少し調べてみると、中国「嶺南地方」原産という記述が見られます。嶺南地方というのは、中国南部の広東省、江西省とベトナム北部を含む一体を指す地域のことで、「嶺南」という言葉通り、いくつかの嶺に囲まれた、地形的には一つの地域になっています。
以前、香港からベトナムのハノイまで全ての行程をバスだけを使って旅行をしたことがあります。この時に漠然と感じていたのは、大きな山は越えず、国境はあれど一続きな土地であるということでした。何よりも同じカルスト地形で有名な中国の桂林とベトナムのハロン湾が見た目にもそのまま同じ大地であることを証明してくれていますし、カルスト地形は桂林やハロン湾にだけあるのではなく、嶺南地方の様々な場所でみることができます。香港からベトナムへの道中では、このカルスト地形の中を移動する場所もあるので、長い長いバスでの移動ですが、その景色が移動中の醍醐味とも言えます。
嶺南地方について考えてみると、さらに思い当たることがあります。広東語とベトナム語。このどちらの言語も私が中途半端に学習をしたという点で共通点がありますが、それはさておき、音がよく似ている印象があります。文法的には共通点がないようですが、嶺南地方という同じ地域で発音の仕方などが似たものになっていったのかもしれません。
ライチの花は毎年この時期に何かを教えてくれます。今年は私の住む深圳からベトナムまでのつながりについて教えたかと思うと、感慨深いものがあります。
話はそれますが、多くの帰国生入試では面接が設定されています。その中で、「自分の住む国・地域」について話すことは大きなテーマの一つです。入試対策のために行動するのは可笑しなことですが、日頃から自分の住む地域での生活を楽しんでいれば、自ずと面接の答えなど簡単に用意できるものです。一般的に言われているその国の評価ではなく、自分なりに感じたことを自分の言葉で伝えらえることが大事だと思います。地域の公園や広場などに行ってみるだけで、きっと新しい発見が得られるので、忙しいときこそ普段行かないところに行ってみてください。
入試にとらわれて生活しているのは堅苦しくて仕方がないですが、海外での生活を満喫することこそが海外に住む子供たちに求められていることだと思います。せっかくの海外生活ですから、とことん楽しみましょう!