香港学習塾 epis Education Centre

わかば深圳教室 教室長ブログ

教室長末木千尋

2011年12月に香港へ赴任。旧九龍教室、わかば深圳教室とで合計6年間勤務をし、2017年から再び深圳へ。きめ細やかなサポートには定評があり、時間が経つのも忘れついつい話し込んでしまうことも。本気で立ち向かう生徒の守護神として頼れるアネゴ的存在であるスエキチ先生は、衣食住どれをとっても刺激の絶えないここ深圳での生活がお気に入り。暑さには弱いが辛さには強い。好物は山椒のたっぷり入った激辛料理全般だとか。

2019年はいかに学ぶべきか

深センの日の出。ドローンで撮影。

あけましておめでとうございます。
2019年もよろしくお願いいたします。

2019年は不確定要素が増し社会不安が高まる、あまり明るい未来の描きにいく1年としてスタートしたように感じています。

そんな印象に反して、私にとって2019年は楽しみな1年のスタートです。
不確定要素が増すということは、それだけ考える余地があり、想像力、アイディアの活きる時代だと言えるからです。不確定性を悲観的な見方ではなく、自由な発想で変えられる新時代の到来として楽しんでいきたいと思っています。

新時代においては、これまでの日本社会のように「みんなと同じことをやっていれば安心」という常識は通用せず、「みんなでいろんなアイディアを出していく問題を解決していく」ことが非常に重要になってきます。

教育という観点で言えば、子供たちに与えていくべき教育機会に対する絶対的な解はなく、家庭ごとに改めて考える必要があります。

「みんなと同じことをやる」ことがリスクにつながりかねない時代であるからこそ、子供たちには興味の幅が広がるような体験の機会を増やし、熱中できること、好きなことを見つけ、成功体験だけではなく失敗体験もしたらいいと思います。

episでは各教科の授業を通じて知識やテクニックだけではなく、「考えること」「試すこと」「考察すること」の重要性を伝えています。それは、どんな教科を通してでも伝えられることで、子供たちが将来に備えてつけておくべき最も重要なことだ思っています。

私は算数・数学を教えることが多く、算数・数学というのは、「ドリル演習」「反復演習・復習」で攻略できるということをよく耳にします。それは出題内容がかなり限定されたテストに対しては有効ですが、そうでない場合には基礎力の強化にしかなりません。

実際の入試においては、初見の問題をいかに解くかが鍵になるので、前述の「考えること」「試すこと」「考察すること」という一連のトライアンドエラーが最も重要な力になってきます。

不確定要素の多い現代もまさにそのような数学の難問を解くような時代で、その予測不可能な時代に対するには、トライアンドエラーができることは大きな力となります。

このような時代だからこそ必要な学びがあること念頭に、今年はこれまで以上に新時代に即した子供たちの力を引き出すべく授業に臨んでいきたいと思います。

今年も1年どうぞよろしくお願いいたします。


2018年総括「やはり深センらしい1年」

中学生たちとドローンで撮影。

2017年の反省から「原点回帰」を念頭においてスタートした2018年。
チャレンジよりも地固めと思っていましたが、勢い溢れる深センという街はそんなことを許してくれるはずもなく、チャレンジに満ちた1年となりました。

2018年は、わかば深セン教室の新たな取り組みとして、「英語教育の進化」、「STEM教育」の2つの大きなチャレンジをしました。

「英語教育の進化」

「英語教育の進化」は、episの英語の講座である「Next English」の学習システム「e-time」に「Next Grammar」を加え、学習のシステムを強化させたことです。

この強化により、「小学生のうちに英検2級」は夢ではなく、当然目指すべき目標点になったと言えます。

深センの子供たちは、日本に帰るときに世界中から帰ってくる帰国生と同じ帰国生として扱われ、入試においてはレベルの高い英語の試験を受ける必要があります。

深センで当たり前に英語の学習をしたのでは、その英語の試験には全く歯が立たないので、ここ数年は一番力を注ぎ込んできました。

数年かけて研究してきたそのプログラムが今年ついに進化を遂げ、子供たちがメキメキと英語の力をつけてくれています。

「同じ帰国子女だけど英語が苦手」などというコンプレックスはもう持たなくても大丈夫!

STEM教育のスタート

STEM教育(Wikipedia参照)」をスタートできたことは、わかば深セン教室が深センにある責任を果たすという意味でも非常にうれしいことです。

深センという街がイノベーションを産み出す先進的な都市として世界的な注目を集める中、深セン市で行われる教育も独自の進化を遂げ、モノづくりとプログラミングを融合させた新しい形のSTEM教育の体系を作りあげています。

この深セン特有のSTEM教育は、AI活用前提の新時代に生きる子供たちが大人になったときに役立つ能力、リテラシーを身につけるには非常によい学びだと思います。

その学びが実践されている深センに住む日本の子供たちが地理的恩恵を受けずに日本に帰っていくことは本当に大きな機会損失なので、STEM教育をスタートさせることは私にとっては悲願でもありました。

そのSTEM教育をスタートさせることができたのも、日本からの多くの協力者があったからこそです。

深センに住む日本の子供たちに深セン特有の教育を届けたいという、私と同じ思いを持つ、深セン在住、日本在住の有志たちが、知識面、技術面、物資面そして精神面でもサポートしてくれたことが大きな力となりました。

自分自身で物事を解決したり、対価を払って物事を解決したりすることでなく、「深セン」をキーワードに生まれたコミュニティーのネットワークによって物事が前進させるような、インターネット社会が産み出す、新しい時代の人の関わり方、仕事の取り組み方を知る機会にもなりました。

来年も「原点回帰」

結果的に「原点回帰」を意識しながらの「猛ダッシュ」の一年になった2018年。「原点回帰」を常に意識していないと深センという魔物の濁流に飲み込まれかねないので、来年も「原点回帰」でがんばります!

ご協力くださったみなさま1年間誠にありがとうございました。
来年もまたよろしくお願いいたします!


マインクラフトで学ぶプログラミング

ブロックによるビジュアルプログラミングを使用

マイクロソフトのオフィスやマインクラフトエデュケーションの開発チームでプログラムマネージャだった鵜飼佑さんに、マインクラフト(Minecraft Education Edition)を使ったワークショップを開催していただきました。

マインクラフトで遊んだことがあっても、プログラミングはしたことがないという生徒がほとんどである中とてもとても楽しいワークショップとなりました。

2020年のプログラミング教育必修化において、プログラミングの学習の目的は、プログラマーが日本に不足していることや、プログラミング的思考力をつけることとも言われています。

正直そこには夢もありませんし、何を目指しているのかが捉えにくい印象が拭えないのですが、実際に文科省でプログラミング教育を推進されている鵜飼さんにお話しをうかがうと、もやもやとしていたイメージがとてもクリアになります。


トリが100羽降ってくる

まず小学校におけるプログラミング教育は、「プログラミングを楽しく体験する」ことが第一で、「またやってみたい、もっとやってみたい」という子供が増えることが一番だということです。それから、「プログミングによって解決できることがある」ことを知ることです。

人間が作業をしたら大変で、ミスをしてしまうこともコンピュータなら、ミスもなく楽にこなしてくれます。むしろそこがコンピュータの得意な分野であるわけです。

今回は、マインクラフトのプログラミング機能を使って、「階段を作る」「螺旋階段を作る」「空から100羽のニワトリを降らせる」などという手作業では非常に手間のかかることを1つの命令だけでやる方法を学びました。

この学びにおいて重要なことは、その時に入力したコマンドを覚えることではなく、プログラミングによって「複雑な作業を効率化できる」ということ、そして「プログラミングができたらもっともっと楽しくなる」ということです。

今回のたった1回のワークショップだけでも、「またやってみたい」、「もっとやってみたい」という声を多く聞くことができました。

2020年のプログラミング教育必修化は不安の声ばかりしか聞こえてきませんが、今回のワークショップを通してきっと楽しいものになるだろうと感じました。


プログラミング教育講演会


未踏ジュニアの代表で文部科学省でプログラミング教育を推進している鵜飼佑さんと未踏ジュニアプレジェクトのスーパークリエイターに最年少で選出された大塚嶺君が深センの教育事情を視察にいらっしゃるということで、せっかくの機会なので、保護者向けのプログラミング教育に関する講演をしていただきました。

鵜飼さんからは、「今なぜプログラミング教育が必要なのか」、「文部科学省の進めているプログラミング教育の中身」などについて非常にわかりやすくお話しいただきました。ご自身が未踏プロジェクトのスーパークリエイターに選出されたり、MicrosoftやMinecraftでのエンジニアとして一線で活躍されたたりしているだけに、ご参加いただいたお母様方にとって、話しの一つ一つが身近で、ご自身のお子様にとっても無関係ではないことをご理解されたかと思います。

また、鵜飼さんが文科省で推進されようとしているプログラミング教育の中身についてもご説明がありました。

例えば、最近プログラミング教育と言えばMakeblockのMbotのような車輪のついたロボットがあります。そのような製品を使ってプログラミングを学ぶことも多いのですが、この学びに日本の重要な産業の一つである自動車産業とのコラボレーションで自動車の自動運転について学ぶ授業を作ったり、ドローンとプログラミングと運送業のコラボレーションを作ったりと、日本の産業・企業とのコラボレーションでより実生活にも役に立つ知識を学ぼうという授業も検討されているとのことで、今までイメージのしにくかった政府主導のプログラミング教育も楽しく、将来役立つものであるイメージが非常にわきやすい内容でした。

ご自身がエンジニアとしてもご活躍されているので、プログラミングができたら何ができるのかも非常にわかりやすくお話しいただけました。テクノロジーが非常に身近なところに来ていて、小学生や中学生でもプログラミングができる時代が到来しています。そのためいつでも誰でもテクノロジーを使ったサービスや製品を作り出すことができるようになっているので、プログラミングやテクノロジーを使って今までは解決できなかった問題を解決することや、自分のアイディアを形にしやすい環境が整ってきているため、プログラミングを学ぶことは自己実現のツールとして非常に可能性があると言えるということです。

スーパークリエイターの大塚君からは、小学生でアプリを開発するに至った経緯や、どんなことに興味を持ち、どんなことをしてきたことが、今の大塚君のベースになっているのかを話してくれました。まだ中学生1年生であるにも関わらず、今までの人生をしっかり振り返って話してくれました。その中で印象に残ったのは「多くの経験をすること」についての話しです。

大塚君がプログラミングに興味を持ったのは、スポーツや学びを含めて全ての経験の中の1つであり、親御さんがプログラマーに育てようとしたのではないということです。小さい頃から様々な経験を重ね、その中でたまたま一番はまったのがプログラミングだったということです。

非常に学びの多い時間となり、出席された親御さんからの質問もどんどん尽きない様子であっという間の1時間半が過ぎ去りました。

日本からは深センのプログラミング教育、STEM教育に注目が集まる中、深センに住む日本人は地理的に大きなアドバンテージがあるので、せっかく深センにいるのですから、いろんなことにチャンレンジしていってほしいと思います。


ドローンスクールワークショップ

コワーキングスペースのイベント会場

深圳市龍崗区にあるドローンスクールにて、小・中学生向けのドローンのワークショップを開催しました。
ワークショップの構成は「飛行機・ドローンの歴史」、「ドローンの組み立て」、「DJIドローンのVRゴーグル体験」となりました。


ワークショップはほとんどが中国語で、一部英語という内容なので、中国語が得意な生徒に通訳として参加してもらいましたが、「問題は自力で解決する」というのが今回のイベントの主旨の1つでもあったので、困ったら中国語か英語でスタッフに自分で話しかけたり、身振り手振りで意思疎通したりしてもらいました。

ドローンの組み立ては、極めて中国的なノリで「とりあえず組み立ててみよう!」とスタートしました。木製のパーツを1つ1つ組み立てる作業は中学生でも大変な作業で、約1時間半を要する作業となりました。

ドローン本体の枠組みができあがったところで、ドローンを制御するボードやモーター、プロペラを取り付けます。


取り付けが完了した生徒からリモコンとペアリングして飛ばし始めるのですが、実はここからが中国式ドローンワークショップの開幕だったということは私もその時にはじめて理解しました。

いざ飛ばし始めてみると、さまざまな問題が起こります。今回組み立てたドローンは、ドローンの代表格である、クワッドコプター(quadcopter)でプロペラを4枚搭載したものです。
クワッドコプターの場合、全てのモーターの回転方向が同じ回転方向にしても飛ぶことができず、斜めのペア同士で回転をそろえ、隣同士は反対方向に回転させる必要があります。

また、モーターに取り付けるプロペラも2種類あって、それらを正しく取り付けないと、モーターは回転するものの全く飛ばなかったり、ドローン本体が回転しながら飛んでしまったりします。

これらの問題は座学で前もって知識を与え、説明書をしっかり見ながら組み立てさせれば何も問題が起こらないわけですが、そこは意図してか、意図せずにか「組み立てたら飛ばしてみよう!」、「飛ばなかったら考えよう!」というスタンスなので、問題がそこら中で起こります。

そして「なんで飛ばないの!?」ということになり、ここから学びの時間スタートという荒行です。

荒っぽい学びではありますが、座学で得る知識とは全くことなるインパクトがあります。説明書通りに正しく組み立てた場合は、モーターの方向など何も気づかずに飛ばせてしまい、全く学びがない可能性もあります。


学びのプログラムを精緻に作り込むことももちろん重要ですが、お膳立てが多いことで学びの機会を失ったり、学びのモチベーションを下げてしまったりする可能性もあります。

今回は中国の荒波のようなワークショップの中で自分の手で最初から最後までドローンを組み立て、飛ばすところまでの経験は、ドローンのワークショップを超えて中国そのものを経験しているという点でもおもしろい学びの機会になりました。

今回組み立てドローンは、手で組み立てたドローンにも関わらず非常に安定していましたし、プログラミングもできるものです。次はまたプログラミングもからめたワークショップにも挑戦したいと思います。