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受験基礎知識

海外からの高校受験

はじめに


海外からの高校受験は、中学受験に比べて帰国生に対する優遇措置をとっている学校の数が圧倒的に多く、海外で入試を行う高校の存在も含め、国内での受験よりも有利に展開できる場合がほとんどです。

また、近年では、日本の学校サイドが少子化による生徒募集に強い危機感を感じていることに加え、帰国生全般に言える語学力や異文化適応能力を高く評価していることから、帰国生に対する期待がいっそう高まっていると言えます。

しかしながら、「帰国生入試」と言っても地域・学校によってその形態は様々であり、正確に最新の入試情報を把握し、効率的・効果的に制度を利用していくことが肝要です。特に、出願資格(帰国子女認定が必要な学校もあります。)・入試科目・入試時期の確認が大切です。


1. 海外入試・書類選考での入試

海外からの高校受験にとって最もメリットが大きい制度が、海外で実施されるいくつかの私立高校入試の存在です。とりわけ、寮設備を持っている高校が実施する海外入試は、赴任期間が長期化している傾向が強い現在、保護者にとってもありがたい存在です。おおむね、11月〜12月の年内に、香港やシンガポールなどのアジア・欧州・北米の主要都市で実施されます。

首都圏では土浦日本大学高校(茨城)や茗渓学園高校(茨城)、関西圏では同志社国際高校(京都)、立命館宇治高校(京都)などが代表的な海外入試実施校です。4校ともに男女の寮を完備しており、帰国生の受け入れ経験が豊富です 。さらに、例年、海外でも積極的に学校説明会や相談会を開催し、帰国生の受け入れに熱意をもって取り組んでいます。

また、鎌倉学園高校(神奈川)や桐蔭学園高校(神奈川)、法政大学第二高校*(神奈川)などは一定の条件(学校の成績や英検の取得級など)を満たせば、書類選考だけで合格を勝ち取ることも可能です。(*法政大学第二は専願受験のみ)

海外で受験できるおもな日本の高校(書類選考を含む)

高校名入試実施場所(海外)入試科目
土浦日本大学高校香港・シンガポール・台北・上海・バンコク・ジャカルタ国・数・英・面接
茗渓学園高校香港・シンガポール・上海・バンコク・シカゴ・ロンドンA:英語・面接
B:国・数・英・面接
同志社国際高校シンガポール・ロンドン・ニューヨーク・ロサンゼルスA:小論文(日本語以外)・面接・書類
B:国・数・英
立命館宇治高校香港 ・シンガポール・上海・ロンドン・ニューヨークIB:小論文(英)・数・面接
推薦・専願A:作文・面接
推薦・専願・併願B:国・数・英・面接
函館ラ・サール香港・上海・バンコク国・数・英
関西学院千里国際高等部シンガポール・ロンドン・ロサンゼルス・ニュージャージー書類・作文(日本語または英語または他言語)・面接
明徳義塾高校シンガポール・台北・上海・バンコク・ジャカルタ・クアラルンプールA:国・数・英・面接
B:作文(日本語または英語)・面接
富士見丘高校香港 ・シンガポール・ロンドン・ニューヨークA:英語エッセイ・基礎日本語作文
B:国・数・英
啓明学院高校シンガポール国・数・英・作文・面接
鎌倉学園高校書類選考
桐蔭学園高校書類選考
法政大学第二高校書類選考(*専願受験のみ)

2. 在外日本人高校

早稲田渋谷シンガポール校、慶応義塾ニューヨーク学院、立教英国学院など、海外の日本人高校も選択肢のひとつになります。アジア・オセアニア地域からは、ほぼ例年何名かの生徒が早稲田渋谷シンガポール校または慶応義塾ニューヨーク学院に進学しています。

特に、 シンガポールに日本人高校が存在するということは、受験生の選択肢を増やすということ以上に、 海外赴任期間が長い傾向にある企業の駐在員家庭や、現地定住型の日本人家庭にとってはありがたいことだと言えます。また、第1回入試が12月にアジア各地で入試が実施されるので、アジア在住の受験生にとっては年内受験の候補のひとつになります。

在外のおもな日本人高校

高校名所在地
早稲田渋谷シンガポール校57 West Coast Road SINGAPORE 127366
慶應義塾ニューヨーク学院3 College Road, Purchase, NY 10577 USA
立教英国学院Guildford Road, Rudgwick, W.Sussex RH12 3BE U.K.
帝京ロンドン学園Framewood Road, Wexham, Buckinghamshire SL2 4QS U.K.
スイス公文学園高等部CH1854 Leysin, Switzerland
如水館バンコク22/53 Moo13, Suwinthawong Rd., Sansaeb, Minburi, Bangkok 10510 Thailand
上海日本人学校高等部〒200127 上海市浦東新区錦康路277号

3. 帰国生のために特化した1月の入試と東京会場入試

首都圏の中央大学杉並高校(東京)、青山学院高等部(東京)、国際基督教大学高校(東京)、渋谷教育学園幕張高校(千葉)などは一般の入試日とは別に、1月に帰国生のための選抜試験を設定しています。

特に、東京の3校は、共学の大学付属校であり、受験生からは非常に人気の高い学校です。学校側も帰国生の受け入れに熱心で、それぞれ学力以外の観点も重視した帰国生のための入試を実施しています。高い進学実績と自由な校風で人気の渋谷教育学園幕張高校は、非常に難易度の高い英語のみの選抜試験を実施しています。

あわせて、寮を持っている私学として、佐久長聖高校(長野)、西大和学園高校(奈良)、愛光高校(愛媛)はそれぞれ魅力的な学校です。長野・関西・四国以外の地域出身の方でも、東京会場での帰国生入試は、1月の受験校として十分に検討の余地があります。

また、東京の3校に関しては、第一志望として受験する生徒だけでなく、2月の埼玉・東京・神奈川の人気大学付属校入試(早慶付属系属高校)の前哨戦としても位置づけられています。これらの学校の合格を得た上で、2月の難関校にチャレンジしていく受験生が少なくありません。

帰国生のために特化した1月の入試と東京会場入試

高校名2015年度入試日/合格発表入試科目
中央大学杉並高校1月24日(土)/1月25日(日)国・数・英・面接
青山学院高等部1月31日(土)/2月2日(月)適性検査・面接・調査書
国際基督教大学高校1月29日(木)/1月30日(金)書類審査・面接
渋谷教育学園幕張高校1月20日(月)/1月23日(木)*1英語・面接
佐久長聖高校(東京会場)*21月12日(祝)/1月15日(木)国・数・英
西大和学園高校(東京会場)*21月28日(火)/1月30日(木)*1国・数・英・面接(日または英)/国・数・面接(英検準1級程度の英語力が必要)
愛光高校(東京会場)*21月18日(土)/1月21日(火)*1国・数・英/英・数・国・理・社
早稲田佐賀高校(東京会場)*31月17日(土) /1月22日(木)国・数・英・面接

*1:2014年度入試  *2:県外入試と同時実施 *3:本校・福岡会場と同日実施の専願入試

その他の1月実施校

高校名所在都道府県共学・別学入試科目
滝高校愛知共学国・数・英・面接
南山国際高校(編入のみ)愛知共学書類*+小論文・英・面接
西南学院高校福岡共学英・数・面接
早稲田佐賀高校佐賀共学国・数・英・面接

*:一次選考としての書類審査


4. 私立・国立高校入試

多くの私立・国立高校入試で、帰国生のための優遇措置がとられています。ほとんどの場合、一般受験の受験生よりも合格最低点を低めに設定すること(あるいは加点制度)で帰国生に配慮してくれています。しかしながら、入試問題は一般受験と同じである場合がほとんどですから、求められる学力レベルにおいて大きな差異はありません。

受験教科にも注意しなければなりません。首都圏の私立高校は一部を除いてほとんどが3教科(英語・数学・国語)で受験できますが、関西圏をはじめとするその他の地域では、理科と社会、または理科のみを加えた4〜5教科受験が主流となります。

国立高校に関しては、首都圏では東京学芸大学付属、関西圏では大阪教育大学附属高校池田校舎に関しては、帰国生に限って3教科で受験が可能になっていますが、両校ともに入学3年後には大学受験が待ち構えており、そのことを考えると受験教科に理科や社会がないからと言って勉強しないで良いわけがありません。

海外で長い期間を過ごした受験生の中には、理科や社会が不得手な生徒も少なくないので、志望校がはっきりするまでは〈捨て教科〉をつくらず、主要5教科はまんべんなく勉強していくことが、選択肢を増やすことに直結し、それが柔軟な〈併願作戦〉を可能にします。

2月に帰国生入試を実施している主な私立・国立高校

高校名所在都道府県共学・別学入試科目
早稲田大学高等学院東京男子国・数・英・小論文
早稲田大学本庄高等学院埼玉共学国・数・英・2次面接
早稲田実業高等部東京共学国・数・英
慶応義塾高校神奈川男子国・数・英・2次面接
慶応義塾志木高校埼玉男子国・数・英・2次面接
慶応義塾湘南藤沢高等部神奈川共学国・数・英・面接
慶応義塾女子高校東京女子国・数・英・作文
東京学芸大学附属高校東京共学国・数・英・2次面接
筑波大学附属高校東京共学国・数・英・理・社・書類
筑波大学附属駒場高校東京男子国・数・英・理・社
豊島岡女子学園高校東京女子国・数・英・調査書
巣鴨高校東京男子国・数・英
国際基督教大学高校*1東京共学国・数・英・調査書
成蹊高校東京共学国・数・英・面接
市川高校*1千葉共学国・数・英
東邦大学付属東邦高校*1千葉共学国・数・英・理・調査書
専修大学松戸高校千葉共学国・数・英・面接
日本女子大学附属高校神奈川女子国・数・英・面接
佐久長聖高校*1長野共学国・数・英・理・社
愛知教育大学附属高校愛知共学国・数・英・面接
立命館守山高校滋賀共学アカデミア:【推薦】作文・面接【専願】国・数・英・理・社・面接【併願】国・数・英・理・社
フロンティアサイエンス:【専願】国・数・英・理【併願】国・数・英・理
洛南高校京都共学国・数・英・(+理社参考受験)・面接・報告書/国・数・英作文・面接・報告書
西大和学園高校*1奈良共学国・数・英・面接(日または英)/国・数・面接(英検準1級程度の英語力が必要)
清風高校大阪男子国・数・英・理・社・面接
大阪女学院高校大阪女子国・数・英
大阪教育大学附属高校池田大阪共学国・数・英・面接
関西大倉高校大阪共学国・数・英・理・社
関西大学第一高校大阪共学書類審査・国・数・英・面接/書類審査・筆記(日本語)・英語・面接
早稲田摂陵高校大阪共学国・数・英・小論文・面接
須磨学園高校兵庫共学国・数・作文(英語)・面接
関西学院高等部兵庫男子*2国・数・英・面接・書類

*1:1月実施の試験もあり(推薦入試は除く) *2:2015年共学化


5. 公立高校入試

各都道府県の公立高校に進学をする場合、地方自治体によって詳細が異なりますので、帰国予定の都道府県(場合によっては市町村)の規定をしっかり確認しておく必要があります。

一般的に言えば、帰国生の受け入れ実績が少ない地方自治体の場合、細かな規定が整っていない場合が多いと言えます。それ故に、出願資格を満たせばどの高校でも受験が可能な場合も少なくありません。一見、幅広く受け入れられるようにも受け取れますが、裏を返せば、帰国生に対する配慮や、入学後の受け入れ体制に不安が残ってしまいます。

一方で、帰国生の受け入れ実績が多い都道府県では、受け入れ校が指定されている場合も少なくありません。例えば、東京都では都立竹早・三田・国際・日野台の4校が〈特別選抜実施校〉として指定されています。この4校に関しては、国(作文含む)・数・英・面接で受験が可能になります。近県を見渡すと、千葉県では県立・市立高校合わせて20校、神奈川県では6校が帰国生の募集を実施しています。

愛知県では6校の愛知県立高校と名古屋市立高校が、大阪府では、15校の大阪府立高校と大阪市立高校が対象となっています。ただし、大阪府では、英語科・国際教養科・国際文化科・グローバル科および総合科学科に限って帰国生の入学者選抜が行われますので、志望者には注意が必要です。また、福岡県では帰国生のための〈特別学力検査〉の実施校が20校指定されていますが、日本人学校在籍者は対象外です。

このように、公立高校に限って受験を考える場合、帰国生への優遇措置を期待すると選択肢が限られてしまいます。例えば、日比谷高校(東京)、旭丘高校(愛知)、北野高校(大阪)、修猷館高校(福岡)などの公立の名門校を志望する場合などは、国内の中学生と同じ土俵で入試を受ける必要があります。その場合、内申点などの学校成績も重要な選抜要素となる場合がありますので、場合によっては中学1年生から学校での成績を気にしておく必要があります。

帰国生入試を実施している主な公立高校

都道府県高校名学科(コース)
東京都都立竹早高校普通科
都立三田高校普通科
都立国際高校国際学科
都立日野台高校普通科
神奈川県県立横浜国際高校単位制国際情報科
県立神奈川総合高校単位制普通科(国際文化コース)
県立弥栄高校単位制国際科
横浜市立東高校単位制普通科
千葉県県立幕張総合高校普通科
県立船橋高校普通科
県立成田国際高校普通科・国際科
千葉市立稲毛高校普通科・国際教養科
愛知県県立千種高校国際教養科
県立豊田西高校普通科
県立豊橋東高校普通科
県立刈谷北高校普通科
名古屋市立名東高校国際英語科
京都県府立鳥羽高校普通科(スポーツ総合専攻を除く)
府立西舞鶴普通科
大阪県府立住吉高校国際文化科・総合科学科
府立千里高校国際文化科・総合科学科
府立泉北高校国際文化科・総合科学科
府立佐野高校国際教養科
府立箕面高校国際教養科
大阪市立東高校英語科
大阪市立高校英語科

6. 海外からの高校受験のスケジュール

前述のように、海外からの高校受験は11月からスタートするため、国内の受験生より3〜4か月程度前倒しでスケジュールを組んでいく必要があります。中3になってしばらくすると、その時点で、すでに高校受験まで〈あと半年〉と言うことになりますから、慌てて受験を考えているようでは間に合うものも間に合いません。

まず、年内に海外各地で行われる〈海外入試〉において、しっかりとした準備を経た上で受験できれば、入試の〈前哨戦〉として絶好の〈力試しの場〉になります。この入試結果で自信を得て、さらにレベルの高い学校にチャレンジしていくこともできます。仮に失敗したとしても、その失敗を糧に、第一志望に向かっていくことも可能です。

また〈書類審査の入試〉なども利用しながら、年内に〈滑り止め校〉を確保すると言った現実的な意味でも、その後の受験を有利に展開できる海外生の特権とも言えます。こうした海外在住の特権を上手に利用しながら、戦略的な志望校や受験校の選択を行いたいものです。

〈海外入試〉や〈書類審査の入試〉の中に、志望の学校がない場合でも1月中には〈滑り止め校〉を確保したいものです。前述の〈帰国生のために特化した1月の入試〉は、明らかに一般入試よりも帰国生に有利な受験ですから、この制度を利用して、この時期に、このレベルの進学先が確保できると言うことは、その後の〈2月入試〉や〈公立高校入試〉での選択の幅を大きく広げてくれるはずです。

入試スケジュール《首都圏男子例 / 早慶附属校が第一志望の場合》

2014年

実施日入試実施校入試科目
11/1土浦日本大学高校国・数・英・面接

2015年

実施日入試実施校入試科目
1/24中央大学杉並高校国・数・英・面接
2/1立教新座高校国・数・英
2/7慶応義塾志木高校(一次)国・数・英
2/9早稲田大学本庄高等学院(一次)国・数・英
2/10早稲田実業高等部国・数・英
2/11早稲田大学高等学院 または
慶応義塾志木高校(二次)
国・数・英・小論文
面接
2/12慶応義塾高校(一次)国・数・英
2/13東京学芸大附属(一次)国・数・英
2/14早稲田大学本庄高等学院(二次)面接
2/15慶応義塾高校(二次)面接
2/16東京学芸大附属(二次)面接

7. 帰国生入試の必勝法

ここでは、首都圏の3教科型の私立高校入試を例にとって説明します。私立高校の入試の場合、ほとんどが300点満点の試験で6〜7割程度得点できれば合格することが可能です。つまり、6割だとすれば3科目合計180点程度で合格可能なのです。実際、早稲田実業高等部(東京)の平成25年度入試の合格者最低点は男子が173点、女子が161点でしたので、6割以下の得点で合格可能なのです。

180点の合計点を目指す場合、3教科で60点ずつ得点する必要はありませんので、教科特性と自分の得意科目・不得意科目を考えてシミュレーションしてみることが大切ですが、一般的に言って、3教科の中で最も計算できる教科は英語ではないでしょうか。海外生の場合、中学3年1学期までに英検で準2級や2級を取得している生徒がほとんどですから、彼等にとって、高校入試の英語で80点を取ることは決して不可能ではありません。そうした場合、国語と数学で50点ずつ得点できれば合格最低点を超えることができるわけです。

つまり、3教科型の私立高校入試を突破するためには、英語の学力の安定が何よりも求められるということです。ですから、英語圏の現地校に通う帰国生は、国語や数学をしっかりと対策しておくことで、こうした入試では圧倒的に有利に展開できます。また、日本人学校に通っている場合には、英語の学習は、学習指導要領の範囲内での学習で満足せず、高校での学習範囲まで踏み込んだ意欲的な学習が求められます。

(例)早稲田実業の合格最低点

年度受験者平均合格最低点
英語数学国語男子女子
2014年度52.741.369.6181169
2013年度60.142.852.6173161
2012年度57.142.165.9181188
2011年度64.549.644.5177177
2010年度52.352.365.9186190
2009年度54.442.865.0174182